編集やライティングの課題を研究対象と捉えてプレイフルに探究する
日々、原稿を書いたり編集したりしているなかで悩みは尽きないものです。「いつもタイトルで迷うんだよなあ」とか「もっとストーリー性のある記事を書きたい」とか「読者を惹き付ける導入を書きたい!」などなど。
スキルの熟達において、理想と現状のギャップを捉え、向上したいと願うことは欠かせないステップです。とはいえ、そのギャップがあまりに大きく感じられるとき、解決に向けたアクションを前向きに進めるのは、なかなか骨の折れることです。
ですが、一人ひとりの抱えている悩みや困りごとも、「みんなで研究するテーマや対象」と捉えられたなら前向きかつ楽しく解決に向き合えるのでは......?
そうした考えから、inquireでは業務における編集やライティングスキル向上の取り組みとは別に、自由研究的に、悩みや困りごとを探究する活動『編集・ライティング研究』を行っています。
『編集・ライティング研究』で何をしているのか
『編集・ライティング研究』は、有志のメンバーが研究テーマを設定し、3ヶ月ほどで一定の成果をまとめ、発表するという内容です。以下のような目的意識のもと1年ほど行ってきました。
編集ライティングに携わるメンバーの課題解消及びスキルアップ
→「勉強会」ではなく、当事者性の強い「研究」で体得率を上げる
課題感を「研究テーマ」として日頃から意識することで、気づきの深化を促す
→“研究思考”がよりポジティブに課題に向き合う姿勢を生む
研究として課題解消までの過程をオープンにすることで、周りの人たちが参加しやすい
→アイデアが集まりやすくなるし、プレイフルに取り組める
研究として取り組むことで、「人にわかるようにまとめる」ことが前提となる
→シェアして組織の集合知に
→日頃の業務のマニュアル、コーポレート発信などにも応用可能
編集・ライティング研究はだいたい3ヶ月で1サイクル、以下のような流れで進みます。
テーマ設定&研究計画書の作成
調査方法の精査&実施
調査結果の整理&再調査
調査結果の整理&体系化
こう並べると高尚な活動のようにみえますが、丁々発止の議論を交わしているわけではなく、みんなで「わかるわぁ!」「あるある〜!」など言い合いながら。研究テーマをブレストしたり、深堀りしたり、より楽しい研究になるよう、問いや研究の方法を提案しあったりしています。
例えば、以前「自分の原稿はストーリー性に欠ける」と悩んでいる参加者が「ストーリー性があると感じる原稿を分析し、要素を整理する」といった研究方法を考えていました。が、どこからともなく「その原稿を、ストーリー性がまったくない原稿に改造したほうが楽しいし、ストーリー性が何か、より理解が捗るのではないか」というアイデアが挙がりました。
その後、編集ライティング研究では、要所要所で「自分が佳きと思う原稿の佳き部分をなくすことで、その原稿を構成する佳きの要素を理解する」という研究方法が採られていたりします(魔改造ワークと呼んでいます)
これまで取り組んできた研究テーマ
実際どのようなテーマにこれまで取り組んできたのか、テーマの一部を紹介します。タイトルや書き出し、記事の振り返り、ロジカルライティングなど人によって様々です。
「何も言ってないタイトルを回避するには?」 「心をつかんで話さない書き出しを書きたい!」 「記事の復習ってどうやってる?」 「ビジネスドキュメンタリー的原稿の作り方」 「ロジカルライティングと仲良くなるには?」 「段落論を読んで記事の中心文を分析してみた」
研究成果は基本的にドキュメントやスライドで社内共有していますが、社外にシェアしたものもあります。例えば、私が昨年構成について研究した際の気付きなどをまとめたものがこちら。
想像以上に構成に悩んでいる人が多いと知ることができて嬉しかったのを覚えています。今後も研究成果は随時社外にもシェアしていけたらと思っています。
編集・ライティング研究の心得・効能
ギャップアプローチによる課題解決ではなく、ポジティブアプローチによる楽しい研究活動という位置づけで活動するにあたって、編集・ライティング研究では以下のような心得を共有しています。
身近な悩みや苦労していることを「研究対象」としてとらえてみよう
執筆をしているときに、「タイトルがどうしても書けない…」なんてことはありませんか?普段なら大きな壁だと思っていた悩みも、一度“置いて”じっくり観察してみましょう。
「なんでできないんだろう…」よりもプレイフルに研究できる方法を
どうやったらこの研究は面白くなるか?をいつも頭に入れておきましょう。ワイワイ話し合ってもよし、インタビューしてもらうのもよし。「研究楽しかった〜」と言えるやり方を考えていきましょう。
わからなくなったら、相談を。
研究に答えはありません。答えがない故に、「何をすればいいんだっけ?」と迷うことも多々あります。そうなったときは、すぐに相談しましょう。Slackのチャンネルに投げたら誰かしら反応をくれるはず
日常の業務に「研究」を取り入れる大切さ
以前『プレイフル・シンキング』の著者である上田信行氏は、「プレイフル」とは、ただ楽しく遊ぶのではなく、目の前の仕事に没頭し、真剣に取り組むこと、それによって「物事に対してワクワクドキドキする心の状態」を意味するとお話されていました。
ワクワクドキドキ、プレイフルであるとき、人間は目の前の物事に没頭し、創造性を発揮できます。編集ライティング研究は、まさにそうした状態をつくり、悩みや困りごとを、より楽しくかつ効果的な方法で解決するための取り組みといえるのではと思っています。
研究活動の参考にした書籍・記事
share it on
About
next chapter