快適な読者体験のために。美しい入稿を実現する6つの作法
ウェブメディアに記事を公開する際の「入稿作業」は記事の質を左右する、大事な仕上げ作業です。
同じ内容でも、サイト上でテキストや画像がどのように表示されるかによって、記事の印象は大きく変わります。文字がひたすら均一に並んでいるだけでは読みづらく、最後まで読んでもらえないこともあるかもしれません。記事の内容を読者が視覚的に理解しやすい状態が理想です。
読者の体験を想像しながら、入稿時にちょっとした工夫をするだけで、読みやすさが増したり、文章の流れや視覚的にもリズムが生まれたり、読者の体験をよりよいものにできるのです。
この記事では、入稿のポイントを6つにしぼってご紹介していけたらと思います。
そもそも「入稿」とは
活版印刷時代に原稿用紙に書かれた原稿を印刷所の組版部門に渡すことを入稿と呼びました。より広義になった今では、著者から印刷会社へ原稿を渡すことや、テキストデータとして原稿を渡すことについても入稿とされ、「文字どおり『入稿』は原稿が入る」ことを指す言葉として使われています。※1
ブログ記事の入力や、編集者やライターから預かった原稿を、ウェブ上に公開するためにCMSやプラットフォーム上に入れて反映させていく、これらの作業も入稿のひとつといえます。
〈1〉 テキストに強弱を
原稿を均一のテキストとしてページに反映させていくのみならず、しっかりと文字の大きさや太さを使い分けて強弱をつけることが大事です。
私は、思いを込めて大切に作られた原稿を預かり、世の中に送り出していく最終工程を担うのが入稿作業だと思っています。原稿を単なる文字情報として扱わない、シンプルで簡単なことですが、だからこそ一番気をつかっていることのひとつです。
まずは、見出しの設定をきちんと反映させること。
テキストに視覚的な変化があると、段落の区切りや話の転換点、トピックの構造がわかりやすくなり、記事全体にメリハリが生まれます。
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というように、文字のサイズに変化をつけて使い分けましょう。
〈2〉 適度な改行で流れをつくる
段落を分けたり、改行を加えたりして意味の切れ目を視覚的に伝えていくことは、スクロールで淡々と読み進められてしまうウェブメディアの記事には不可欠です。特に意識したいのは、適度な改行で行間をつくることです。
すでに原稿がそのように仕上がっていることもありますが、改行がなく比較的長く文字が続いている場合もあります。息継ぎのタイミングを作るように、同じ人の発言が続いていたとしても、きりの良いところで適度に区切ったほうが読みやすくなります。
たとえば、以下のパラグラフの場合 ※2
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森部:スピード感は違うかもしれません。ベンチャーやスタートアップの場合、意思決定者が窓口を担当してくれている場合が多いんです。そのため、意思決定者と直接やりとりができ、ものごとが素早く決まる傾向にありますね。ただ基本的な進め方は同じで、プロジェクトの目標、ゴールから逆算し、どういうプロセスで推進していくかといった計画を描くところから始まります。計画から細かなタスクに落としていきながら、プロジェクトメンバーとこまめにコミュニケーションをとり、進捗をつくっていきます。
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2つに分けるだけでも読みやすさに差が出ます。
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森部:スピード感は違うかもしれません。ベンチャーやスタートアップの場合、意思決定者が窓口を担当してくれている場合が多いんです。そのため、意思決定者と直接やりとりができ、ものごとが素早く決まる傾向にありますね。
ただ基本的な進め方は同じで、プロジェクトの目標、ゴールから逆算し、どういうプロセスで推進していくかといった計画を描くところから始まります。計画から細かなタスクに落としていきながら、プロジェクトメンバーとこまめにコミュニケーションをとり、進捗をつくっていきます。
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また、スマホで読む際には特に文字が続いてしまうので、スクロールするまで隙間が一切ない、ということにもなりがちです。一度すべて文字を入れた時点で読んでみると気がつきやすいので、確認してみましょう。記事内の風通しを良くするようなイメージを持てるといいかもしれません。
〈3〉 発言や質問文もアクセントに
対談記事やその他複数人が登場するような場合、発言の先頭に名前をつけることがあるかと思いますが、そこにも工夫を加えると格段と読みやすくなります。たとえば、太字かつコロンを使うと目立ちますし、見出しと見出しの間にアクセントが加わり、内容も入ってきやすくなります。
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A:あああああああ。
B:えええええええ。
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インタビューイーの発言部分や質問文などは、
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──なぜ、会社を立ち上げようと思ったのですか?
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上記のように罫線(ここでは「けいせん」と打って変換された「─」を2つ連続で使用)から始めたり、全体を太字にしたりすると本文との差別化ができ、記事の流れにリズムをあたえます。
〈4〉 本文以外の情報への気配り
記事内でたびたび必要とされるプロフィール文や引用は、囲みや引用符、斜体を使って、特別な情報であることがわかるようにします。例えばプロフィール文に、「引用」と「太字」の機能を使ってみると、以下のようになります。※2
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森部綾子
プロジェクトエディター。新卒でデザイン会社に入社し、紙媒体の制作進行、ウェブサイト制作ディレクション、情報設計などを経験。その後大学院への進学を経て、2020年にインクワイアへ。現在は、主に企業のメディアにおけるコンテンツ企画・運営に携わる。学生時代から、コミュニケーションデザインの分野に興味関心を持つ。休日にはキャンプ、時間があれば犬と散歩しているので、年中日焼けしている。
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特に書籍からの引用を表す際には、引用箇所を斜体にしたりカッコや引用符で囲ったりなどして、本文との差別化をきちんとはかることが大切です。
〈5〉 画像やリンクURLによる視覚的な影響にも配慮を
画像
写真など画像を挿入する際には、記事内で画像の幅か高さ、もしくはその両方が揃うとよりきれいに見えます。プラットフォームによっては、推奨画像サイズが設定されていることもあるので、事前に確認しておけると安心です。
(参考:noteヘルプセンター)
キャプション
そして画像の補足説明となる「キャプション」も大事な役割を果たします。
キャプションがプラットフォームの機能として提供されているのであれば、それを使用します。機能がなければ画像の下に、本文ではないことがわかるように(カッコで囲む)など工夫ができると、読み進めていく際の邪魔にもなりにくいです。
ページURL
異なるページへのリンクを掲載するときには、URLをそのまま https://inquire.jp/ のように貼り付けるのではなく、テキストリンクとして設定すると本文の見た目に影響を与えず、スッキリ見せることができます。
SNSなどの外部プラットフォームのURL
TweetやYoutubeのリンクURLも同様、本文に羅列させず、「埋め込み」の機能を使うことをおすすめします。埋め込みができれば、ページから移動せずに記事内での参照が可能になります。
プラットフォームやCMSによっては多少コードに触れる必要がありますが、「埋め込み」や「メディアの挿入」などといった機能として提供されていることが多いです。
リンクの設定を埋め込みで実施すると、以下のようなカード形式やサムネイルの表示となって、画像と同じくらい視覚的に強いインパクトを与える可能性があります。
そのため、場合によっては、あえてテキストリンクに設定してスッキリ見せたり、逆にスッキリさせずにURLをテキストとして明示的に強調したり。リンクを設定する目的や全体の流れをふまえて検討することも大事です。あわせて、読者の快適な体験を設計することを常に忘れずに。
〈6〉 ルールの統一
最後に、全ての項目について言えることですが、ひとつの記事内ではルールを踏襲することが必須です。例えば、複数人のプロフィールを掲載するときは、全員同じ体裁を使用します。発言者を太字表記にしたなら、すべて同じように整えていくようにしましょう。
ルールがバラバラだと、統一感がなく全体のクオリティが担保されていない印象を与えます。また、可能であれば、記事内にとどまらずメディア内でもルールを統一することがより望ましいです。
せっかくルールを決めたとしても、入稿担当者が変われば体裁が変わってしまうのでは意味がありません。担当者が誰であっても同じクオリティとなるようなアウトプットの状態を目指しましょう。そのためにも、最低限のルールを定め、簡単にでもマニュアルになっているととても便利です。
作業の説明や引き継ぎの際にも役に立ちますし、入稿作業ルールが徹底されれば、公開前の最終確認や修正の工数を減らすことにもつながります。
快適な体験を後押しする
今回は入稿の際の基本的なポイントにしぼってお伝えしました。ここにあるのはほんの一例ですので、いろいろ組み合わせたり、工夫したりしてみてもらえれば幸いです。
使用するプラットフォームやCMSによってできることが多少変わってきますが、ここで紹介したことは機能として備わっているものがほとんどです。使える機能を使って、記事によりよいリズムと表情を与えていけると、読者の体験を一段と快適で豊かなものにできます。
作業自体はそこまで難しくない「入稿」ですが、コンテンツを世の中に発信していくために欠かすことのできない大事な作業です。記事を介してつながる書き手や読み手のことを想像しながら進めていきましょう。
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※1 からふね屋 印刷用語集 「入稿」と「出稿」 https://karafuneya.com/blog/words/nyukou-shukkou
※2 株式会社インクワイア プロジェクトエディターが探究し続ける“編集”とは https://inquire.co.jp/explore/project_editor
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